0から1に踏み出せる
- サクライユウコ
- 2017年11月1日
- 読了時間: 6分
顔や姿、演技や演奏など、その表側にあるものを超えて
中身が好きだなぁ、と思う人の
”ステージで表現している姿”を見るのは、
パブリックとプライベートのスイッチをぱちぱちする
心のうごきが見えてしまいそうで、なんだか気恥ずかしい。
たとえば、
いつもどんな音楽を聴いて、どんなお酒が好きで、
どんな本を読んでいるかもわからないけれど
ステージに立って演奏する姿、その楽曲、その熱量が
誰よりもかっこいい!!と思うバンドがいる。
何度か対バンさせてもらって、企画にも出演していただいて、
東京でのライブ告知ツイートを勝手にリツイートするくらいには大好きだ。
叫び出したくなるくらい大好きだ。
ステージではあんなにキレッキレでギターをかき鳴らすのに
ステージを降りるととても優しい、シャイな笑顔をみせてくれるので安心する。
そんな好きがある。
たとえば、
作品が大好きで、過去作を読みあさり、反芻し、
時には頭が割れるほど号泣して、
新作が出ればその空気にどっぷりと浸らせてくれるような
大好きな作家さんがいる。
けれど私はその作家さんの発言を追いかけない。
一部の攻撃に対する反応が、とても激しいからだ。
もちろん彼女は必要だから発言していることなので、
それ自体を否定するつもりはない。
その考え方自体に共感する部分、気づきをもらう部分もある。
けれど、作品を読む時にキャラクターや背景以外の
余計なところで作者を感じたくないと思うので、
現在は発言を遠ざけている。
そんな好きがある。
表側を好きな人はたくさんいる。
作品、表情、おとづかい、仕草。要素はたくさんある。
内側の言葉遣いでもっと好きになってしまった人がいる。
そんな人たちの表側には、”特別”のフィルターをかけてしまう。
さて、「好きな女優さんは誰ですか?」という問いに対し
私は高校生のときから一貫して次の女優さんを挙げている。
酒井若菜さんだ。
私が高校2年生の夏に放送していた「私立探偵 濱マイク」に、
キャバ嬢のミントという役で出演されていた。
ドラマ版濱マイクは、私のなかで大変な特別さで残っていて、
出演者の豪華さだけでなく(今考えても好きな人ばっかり)、
毎回変わる監督・脚本家、フィルム映像へのこだわり、
そして音楽の華やかさがあった。
EGO-WRAPPIN'を好きになったのもこのドラマがきっかけだし、
The Maiku Hama Themeをずっと長いこと携帯の着信音にしていた。
私は中学高校時代ほとんどテレビを見ていた記憶がなくて、
IWGPや木更津キャッツアイを見ていなかったので、
若菜さんのことはおそらくこれが初見。
このミント役がなんとなく忘れられず、ドラマの特別感も相まって、
すっかり 好きな女優=酒井若菜 が私のなかで定着した。
そんなわけで”若菜好き”のまま大学へ進学し、
バンドをはじめてバイトに明け暮れ、
テレビのない大学生活から脱したあとも、
バラエティ番組に出演されない若菜さんを拝見する機会はおおよそなかった。
なので私は、若菜さんに起きたあれこれも知らずに、
好きな女優=酒井若菜 だけが残っていたのである。(お恥ずかしい)
10年経って、2012年。
TBSの金曜JUNK バナナマンのバナナムーンGOLDにて、
日村さんの主演ドラマに若菜さんが出演されると聞き衝撃を受けた。
日村勇紀×酒井若菜×飯塚健 だなんて!と。
久々に目にした若菜さんのお芝居は、
日村さんのお芝居と、サンボマスターの音楽と、
飯塚健監督の世界のなかでキラキラとイロドられて
本当に素敵だった。
今でも酔っぱらったとき、ひとりでにやにやしながら見てしまうお気に入りだ。
若菜さんの表側は、くるくると輝いていた。
若菜さんのSNSを調べてみたのはその頃で、
小説やエッセイを発表されていることを知らず、
まずはブログ「ネオン堂」を読みあさった。
ネオン堂に綴られる文章は、丁寧な言葉遣いで
疲れた人たちや立ち止まった人たちが呼吸をととのえる
ただ、そばにいてくれる止まり木のようだった。
そばにいる、ということだけをするのはとても難しい。
うずくまってしまった人をその場所から動かすために、
いろいろと言ったり、やったりしてしまいがちだからだ。
若菜さんの文章は「ただそばにいること」をしてくれる。
若菜さんの言葉にひっぱられてしまうことも(もちろん)あるので、
自分のメンタルの状態によって開かないページもあるが、
それもまた、いいような気がしている。
若菜さんは丁寧に言葉を尽くして、「大丈夫」を発信してくれている。
その後は2015年に2本のドラマを見たが、
ネオン堂で発信される言葉や文章という、
若菜さんの内側にどんどん引き込まれてしまって、
なんとなく作品を追いかけることをやめてしまった。
(ご本人は執筆活動が俳優活動につながれば、とおっしゃっているので
なんとも申し訳ない気持ちになる)
若菜さんのお芝居の明るさも陰も大好きなのだけれど、
”何を大切にして生活しているか”が私にとって特別で頭から離れないので
(決して生活感のような”生活”ではなく、もっと大きな”生活”)
なんとなく表側を見るのをやめてしまうのだ。
受け取る側がパブリックとプライベートのスイッチを勝手にぱちぱちして
にやついてしまうからやっかいだ。
にやついてしまう私を、やっかいだと思う。
長くなってしまったが、酒井若菜という人が好きだ。
若菜さんが綴る文章が好きだ。
『酒井若菜と8人の男たち』なんて、私の大切な友人たちに贈ってまわりたいほどだ。
そんな若菜さんが編集長となってWebマガジンを立ち上げた。
執筆されている女性たちは皆素敵な方ばかりなのでお知らせ。
Webマガジン『marble』10月13日(金)創刊
購読はこちら
https://bookstand.webdoku.jp/melma_box/page.php?k=marble
※毎月 第二・第四金曜日に発刊
※購読には会員登録(有料)が必要です
土岐麻子『シティ・ライツ・セレナーデ』
西原亜希『へその形が戻らない』
佐津川愛美『結局、自分が主人公。』
坂本美雨『すきまに名前をつけながら』
西田尚美『気まぐれ自由帖』
酒井若菜『Blue』
(以上掲載順)
余談だけれど、創刊特別キャンペーンで会員登録の先着365名は、
この雑誌『marble』を半永久的に無料で読めるということだった。
その知らせを受けた私の行動は早かった!
見事、『marble』の宣伝課所属(?)と相成れたわけで、
(あっという間に定員となったらしい)
月2回、美しい女性たちの美しい文章に触れている。
6人の女性たちは皆、女優・ミュージシャンをしながら執筆している。
その美しい二足のわらじを、ほんのちょっとまねてみたいと思い立った。
日村さんは、若菜さんの著書『酒井若菜と8人の男たち』の対談のなかで、若菜さんについて
『やりたいやりたい、を叶えちゃうタイプなんだね。設楽さんと似てるね。』
と言っている。
若菜さんは、
『俳優業は、0からは参加できない。文筆業は、0から99まで自分でできる。
私は、この0の作業がとても好きです。』と言う。
自分でやるのは正直キツイ。けれど楽しい。責任を伴うことだけれど、安心だ。
誰かを信頼して頼むのは気力がいる。工程も増える。心強いが、心許なくもある。
達成感はどちらにもある、これは確かなこと。
私は今までひとりで何かをつくることが嫌いではなかった。むしろ好きだったと思う。
間に合わない、思いつかない、どうしよう、どうしよう、
あれこれぎゃーぎゃー言いながら、小さくとも何かをつくってきた。
なのにここのところ、気力と体力が衰えてしまって、
人任せにしてしまうことも多くなってきた。この有様はなんだ。
よし、ここは若菜さんの姿勢を見習ってひとつ、自分に課してみようと思う。
水曜日の18時半のひとりごと、自分の好きと向き合って、考えて、
言葉で表現してみたい。
誰かを巻き込むのは、それからだ。
そして若菜さんの出演作品を、てのひらに広げてみよう。
きっとこれからも、好きな女優=酒井若菜 は変わらない。
次回は、10年の時間がくれる新しい世界について。
では、また。
『0から1に踏み出せる』女優・文筆家 酒井若菜について
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